荒れている海の波が断崖絶壁に己の水を打ち付け、引いていく。
その音がいつもは五月蝿く感じる筈なのに、今日は心地よい。
2月15日、午後一時少し前。
後ろを振り替える。そこは枯れ木が一本あるだけで誰もいなかった。
やはり生徒達は気付かなかったようだ。
ただ、神崎は私にあの暗号の意味を聞いてきたが…。
ここにいないということは結局あの暗号の意味は最後までわからなかったのだろう。
いや、私にとっては「最期」だ。
そんなくだらないことを考えながら私は一歩、また一歩と崖の向こうへと近づいていった。
後一歩で海に落ちる。
その時だった。
「小椋先生っっっ!!!!!」
息が苦しそうな少年の声が聞こえた。

