『大丈夫?のるバスわかる?』
電話越しの、心配そうな声。
「大丈夫!バスに学校名書いてあるはずだし。」
『でも、初めて使う駅でしょ?』
「大丈夫。東京駅みたく複雑じゃないから。」
電話の相手、ずっと仲のよかった紗綾(さや)を安心させる。
『麗奈、方向音痴じゃん!』
心配症だなぁ、と笑うと、笑い事じゃないよと呆れられてしまった。
「あ、あのバスだ。ちゃんとたどり着いたよ。」
そう告げると、少し安心したみたい。
『よかった。学校ついて、知らない人ばっかりでも泣いちゃダメだよ。』
その言葉に、泣かないよ。と反論しながらも自然と笑顔は零れる。
『じゃあ、切るね。ウチもそろそろ駅、つくから。』
「うん。ありがとう。」
『麗奈に、いい出会いがありますように。』
――紗綾にも。
そう告げると電話を切った。
いい友達が、できますように。
そう願って、バスに乗り込んだ。

