拾った本を手に

いきなり立ち上がるものだから

思わず尻餅をついてしまった

汐里は体幹のなさを再認識してしまった

「フッ。なにやってんの、ん。」

そう言って差し出す彼の手に

本を渡す

「そうじゃなくて」

差し出した手首を握り佐竹くんは

汐里を引き上げた

「ワッ、ありがと」

「目の前で転げられたら当たり前でしょ」

もう一度受け取った本を佐竹くんは棚に戻した

「手差し出されたら手をとるでしよ、フツー

だから頼りなさいっていったのに」

いや、佐竹くんのフツーはわかりません

「はい」

佐竹くんはテクニック集を汐里に手渡した

「ううん、もういいや」

「え、苦労してとったのに?」

汐里は頷いた。

佐竹くんとの出会いで暇潰しの本は

要らなくなってしまったから