「……」

返事は、出来なかった。


高崎高校にはどちらかというと行きたくない、という思いの方が強い。

でも高崎高校ならあたしの学力でもいけそうだし、家からそんなに遠くない。

それに何よりお兄ちゃんの頼み―…。


大好きなお兄ちゃんの『お願い』を即決で断ることなんて、出来なかった。


それにお兄ちゃんがここまで言うってことは、もしかしたら何か余程の理由があるんじゃないか。

何か目的があって、やむ負えない理由があってわたしを高崎高校に入れたいのでは?


そういう風に考えてみると、何だか頭が冷静になってきた。



「よ、もぎ…?」

お兄ちゃんの心配そうな声が響く。


その声につられてかどうかはわからないけど、わたしは答えを出してしまった。



「わたし、行くよ。高崎高校に」



これは波乱の始まりだと、頭の隅で鳴る警告には耳を塞いだ―…。