「一応、どこの高校を志望してるんだ?」
「えっと、下崎(しもさき)高校、かな」
特に行きたい!と思う高校がなくて、なかなか進路が決まらなかった。
というか、今でも本当にそこでいいのか、と疑問に思っているところだけど。
家から一番近いし、友達も何人か行くからいいかな、っていう安易な考え。
だけどその反面、わたしには学力が足りないし、担任の先生にも『もしかしたら…、を考えてください』と私立の併願までとらされた。
電話先のお兄ちゃんは『そっか』とだけ言う。
「…なあ、お前が心の底から本当にそこへ行きたいのなら、俺は文句は言わない」
「…うん」
お兄ちゃんの言葉がぐさっと胸に刺さる。
やっぱり、考え直した方がいいのかな。
多分、明日までに担任の先生に連絡すれば変えられるかも知れない。
でも代わりに行く先なんて―…
「俺に蓬の高校生活を託してみないか?」
……へ?
お兄ちゃんの言葉に固まった。


