高校時代からやんちゃをしていたお兄ちゃん。

この田舎にお兄ちゃんの名を知らない人はいなかったみたい。



まあ、あれだけ派手な恰好をして、どうやって入手したのかわからないバイクに跨がり、たまに血を流して帰ってきた彼にわたしはそれはもうよく驚かされたものだ。


それでもうちは『好きなように生きろ』という風に、息子の東京行きまであっさり認めちゃう放任主義だから家庭内で問題はなかった。


むしろいつだってお兄ちゃんは、昔と一向に変わらない頼もしい人だった。

だから、家族にはいつも笑顔が溢れていた。


わたしはお兄ちゃんが大好きで、自慢だってできる。



「そっか。それは良かった」

東京でも何とかやっていけているようでホっとした。



「そうそう。今日は蓬に話したいことがあって、電話したんだ」

話したいこと?


「うーん、何?」

特に心当たりはない。