明日の決行を約束して、殺し屋は出ていった。

何だか肩の荷が下りたような気がする。
もう何も思い悩むことはない。
あと一日で全てが終わる。

あの人に貢いだお金のことも、疎まれている職場のことも、ましてやダイエットなど今となってはどうでもいい。

サラ金から借りられるだけ借りて、今まで味わえなかった贅沢をしよう。



超一流といわれるホテルのスイートを予約した。


後はあの人を誘い出すだけ。

携帯はあえて使わず、会社の電話でかけた。

「聞いて、聞いて。宝くじに当たっちゃった。すごいと思わない?本当だって。私のつきもまんざらじゃないでしょ。それで、今夜会わない?ご馳走するよ」



見え見えの嘘。

こんな嘘も見抜けないくらいに欲にまみれた人。
あぁ、私の心を逆撫でする。

(そうだ、死装束を買いに行こう)

服はもちろんのこと、鞄に靴にアクセサリー、それに下着まで、全て高級ブランド品を調達した。

エステに行きヘヤサロンに行き、約束の時間を迎えるまでには、あの人に貢いだ以上のお金を使っていた。


なんだか無性に可笑しい。

騙されたといって、あんなにも嘆き悲しんだのが夢の中の出来事のよう。

結局、あの人の値打ちはこの死装束以下だったってこと。