それから暫くして「理沙」から電話があった。

理沙は前にいた高校のクラスメイト。

ゴシップ好きで、頼んでもいないのに時々仲間の近況を知らせてくる。

その日も「トモぉ、聞いてよ、ニュース!」と声を弾ませながら皆の進路や就職先を話し始めた。

そうか、私大はそろそろ合否が出る頃だっけ。

私が気のない返事をしていると、理沙は「それで、トモは?」と聞いてきた。

思わず身構える私。

この子、もしかして知ってる……?
カマかけてる……?

ううん、そんなことはない。

私が留年したのは、あの街では家族しか知らない筈だし、父親は極端に世間体を気にするタチだから、娘が三流高校に転校した挙句に留年したなんて口が裂けても言うわけない。