もう…背中を押されることはない。
少しだけさみしい気もする。




でも、爽の分まで生きると決めた。
ちゃんと前をむいて、幸せになろうって。




ふうっと息を軽く吐き、結んでいたゴムを外した。
長い髪がパラッと背中をくすぐった。




「那由汰、ありがと。疲れたでしょ?」




ソファーでぐったり背中をつけている那由汰を見つめた。
元々運動派では那由汰には重労働だったらしい。




「…まぁ、いい運動になったよ」




と、息を吐いた。
そんな那由汰をクスリと笑い、希愛はお茶を入れにキッチンに向かう。




希愛の母親・愛子は理緒たちと共に荷物を解いている。
そのため、二階からまだガタガタと動くような音が聞こえる。




荷物を運べばあとは愛子たちがやってくれるだろう。
そういうことで、希愛は那由汰とリビングへ降りていた。