しばらくすると、希愛の母が制服姿の湖季を部屋へと上がらせた。
久しぶりに見た湖季はにっこりといつもの笑顔で微笑む。
「花澤さん、久しぶり。体調はどう?」
と、希愛のことを心配する。
「大丈夫…です。悪く…ないですから…」
声を出した希愛に瞬きをする。
驚いた表情で座っていた律花を見た。
「律花、花澤さん声出るようになったの?」
「湖季がくる、少し前にね。そのことも話したいから座りなよ」
湖季は驚きながら、『失礼します』と床に座る。
「本当に吃驚した。声…初めて聞いたし」
「驚か…せてごめ…なさい」
「いや、大丈夫。俺が勝手に驚いてるだけだから。…無理しないでね」
と、湖季はいつものように気遣ってくれる。
そんな優しい湖季に少しだけまだ甘えたくなった。
「ありがと…」
でも、それ以上に感謝の気持ちを伝えたくなった。

