さらさらと流れる川。
キラキラと光に反射する水面。


アトールはやはりそこにいた。

日の当たる所に。


フリージアは日が当たる場所の一歩手前から、アトールの後ろ姿を眺める。
獣のように、冷たい視線が放たれた。





「…アトール」




水面に触れるアトールは振り返る。
とても楽しそうな、無邪気な表情で。




───それが憎らしくて、たまらない。







「フリージア!見て見て、とっても綺麗な石が見つかったんだ!
フリージア、綺麗なもの好きだよね!
……フリージア?」





フリージアの姿にアトールは驚倒した。

いつもとは違う体の大きさと
何より、そのあまりに冷たい表情に。




「ねえ…探したのよ…?」





大きくなったその身で一歩一歩アトールに近付く。

不気味な笑みをかかげて。



「フリージア…」

「心配、したんだから」


フリージアはアトールの頬を両手で包み込むと、自分の顔に近づけた。




「大好きよ…」




唇と唇を引き合わせる。



ス───・・


フリージアはアトールの中の何かを吸った。

するとアトールの力が段々と抜け、顔が青くなっていく。





───吸った「何か」は
魂、または生気ともいえるもの。



妖精は、それを食べて生きながらえるモノだったのだ。








「アトール、ごめんなさい。
でも…本当に大好きよ」


唇を放せば、アトールはゴロンと地に転がった。




「……」




冷たい視線がアトールを見下ろす。



青白くなったそれは、もう動く事がないだろう。

そんな事を考える中、頭が段々とスッキリしだす。




黒い何かが頭からスー…と抜け出ていった。