「ほぉ、これが人の魂を食らう妖精ですか!
聞いていたとおり、なんとも美しい」


分厚い眼鏡の奥で、ハンターはニヤリと笑う。

その笑方がいやらしく、気持ちの悪いことこのうえなかった。



「まぁ、嬉しい事を言ってくれるのね」

「嗚呼…是非とも、君の中を捌いて見てみたい!
どうです、ご一緒しませんか?」

「お断りよ」


何かに酔っ払った雰囲気のハンターに、きっぱりとそう言った。
欲まみれのイかれた人間に、付き合うのも嫌だった。


「…やっぱり、貴方はお客様じゃないようね。
ここは貴方みたいな人間が来るような所じゃないわ、さっさと帰りなさい」


「!」




黒い森がざわめく。
風が強く吹きはじめる。

黒い森から一斉に無数の蝶が飛ばされてきて、ハンターに当たる。



「さようなら」



蝶でハンターが見えなくなれば、もうそこにハンターはいなかった。






これは一時凌ぎでしかない。
黒い森がハンターを森の外まで出したのだ。

ハンターはすぐにでもまた
やって来るに違いない。




「…アトールを逃がさなくては」





───この短い時間に、少しでもアトールが逃げられるように
どうにかしないと。

もしもハンターに捕まったら、アトールは永遠に何処かで辛い思いをする。


私は捕まっても、すぐに生花となってしまうから辛くはない。

だから…───






フリージアはアトールのいる花畑へと飛んでいく。

永遠の別れを心に決めて。






****************