フリージアは空高くから、ハンターを見下ろす。


ハンターの姿は白衣に厚い眼鏡。
髪は無駄に長く、一つに結ってある。

しかもハンターには稀な細身の人間。



───科学者のハンターだ。



面倒なヤツが来た。
なんせ普通のハンターよりたちが悪い。



普通のハンターは、捕えた獲物をそのまま弱らせ金持ちに売りさばくだけだ。


しかし科学者のハンターは、捕えた獲物を生き地獄に突き落とす。

生きたまま、体の一部を抉り
血を死ぬギリギリの一歩手前まで抜き
心理的暴行を加える。

そんなハンターの餌食になるなんて、誰もがお断りだ。




この黒い森にも昔、何度かその類いのハンターが来た事がある。

その度に仲間の妖精が減っていったのを思い出せば、憎悪感がふつふつと湧き上がった。





───生気を吸って、この場で殺してやろうか。


黒い何かがそう囃したてる。



しかし、フリージアは首を横に降った。



「…駄目。私はもう、アナタには負けないと誓ったの」



今ここで黒い何かに身を委ねれば、また同じ事を繰り返す。


ならば、私は最後まで私でいたい。


だから、黒い力は借りない。




「…あら、お客様かしら?」



フリージアは不敵な笑顔で、そう言った。