次第にアトールを見ているはずの自分の目がぼやけはじめる。



───ポタッ




気がつけば、涙が頬を伝っていた。








「───っ、私はまた…」





黒い何かが抜け出たフリージアの表情は、まさに悲劇。

アトールを見つめれば、後悔と愛おしさが心を埋め尽くした。





「……っ」






───いつもそうだ。
私は黒いアレに勝てず、支配される。


そして大好きだった彼らを…永遠の眠りへとやってしまう。
ここにいて欲しいのに、自分の手で何度もあっちへとやってしまうのだ。


いつも、いつも、いつも。
何度も、何度も、何度も

この手で。


…皆は、何故あの黒い何かに勝てたのだろうか。
百合も薔薇もガーベラも、皆みんな。
花の姿になってまで、皆は…───






黒い森の中の花畑。
あの花々は、黒い何かに勝った妖精達の成れの果て。

生気が尽きた妖精は、枯れる事のない生花となって一生をこの暗い森で終えるのだ。

もう誰とも会話できず
愛した人間ともう会う事も出来ず
ただ、一生をここで。



生気を吸わず、花となった妖精達はきっと人間を愛したに違いない。

しかし、人間を愛したのは私も同じ。




───それなのに

何故、私だけが勝てない。