「姫」



咲夜が翼の背中を見つめながら私を呼んだ。



「そんな不安にならなくても大丈夫。

俺が勝ったら姫のしたいようにしてもいい」


「咲夜…っ」



肩に手を置いて、見下ろしてくる咲夜は少し困ったように笑う。


あなたはいつだって優しい言葉をくれるんだね………。



「けれども…」



その瞳は一瞬にして真剣な色へと変わる。



「俺の気持ちはずっと変わってない。

だから俺は翼との勝負、本気で戦うつもりだから」



誓うように私の手を取る。


その甲の部分におでこをこつんと合わせた。



「好きだよ」


「……っ」


「俺の1番は姫だけだから」



まるでそれは王子様がお姫様の手を取るような仕草。



「ありがとう…っ//」



咲夜の気持ちがなによりもうれしかった。


けれどもあたしは……


この勝負……



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