けど…。
この黒い心を抑えきれなくなるまえに、邪魔者は退散すればいいんだろ。
「じゃあ俺は先に部活行ってるからな」
「待って!!!」
呼び止められて、ドアにかけた手が止まった。
姫は慌てて俺の元へ走り寄ってくる。
「最後のセリフ…言ってなかったから」
そう言って、俺の手をつつみこむように握ると顔を上げる。
照れたように頬を赤らませる、きらきらの笑顔があった。
「私、すごく幸せです…っ!
ありがとう、"翼"」
「……っ」
こいつ、王子様を俺の名前に変えやがった……
何も言えない俺に、姫ははにかんだような笑顔を見せた。
「びっくりした…?でも最後の白雪姫セリフ、あたしの今の気持ちと同じだったから」

