そう言った瞬間、僅かな沈黙が生まれる。
それでも、一度私から視線を外していた櫻井さんの視線が再び戻ってきた。
そして。
「乗っていくか?」
「何にですか?」
「車」
そう言って、パタンとPCを閉じて立ち上がった櫻井さん。
その姿を瞬きも忘れて見つめる。
そんな私を置いて、吸っていた煙草を灰皿に押し付けた櫻井さんがパソコンを片手に立ち上がった。
「どうせ帰る所は同じなんだし」
そう言って、苦笑いした。
オレンジ色の街頭が道路にポツポツと明かりを灯している。
結局、櫻井さんの車で送ってもらう事になった。
初めは遠慮しまくったけど、再び櫻井さんの強引な物言いに負けた。
この前から迷惑ばかりかけて申し訳ない。
でもまぁ、帰る場所は同じなんだし、無駄な出費は避けたいのは誰でも思う事。
そう自分に言い訳して、懐かしくも感じるあの車に乗り込んだ。



