お先に失礼します。とパソコンを打ち続けている櫻井さんにそう言って、喫煙室を出ようと踵を返す。
すると。
「体調、どうだ」
その声に反応して振り向くと、パソコンに視線を向けたままの櫻井さんがいた。
しかし、パチっとキーを押してから、私の方に視線を向けた。
「あ、はい。おかげさまで。朝と変わらず問題ありません」
「そうか」
「あの……電話出れなくてすいませんでした」
「気にするな」
そう言って、うーんと大きく背伸びをした櫻井さん。
ギュッと目を閉じた姿まで爽やかなんだから、凄い。
その姿をぼんやり見ていると、大きく息を吐いた櫻井さんの視線がこちらに向いけられた。
「帰りはどうするんだ。終電乗り過ごしただろ」
「タクシー拾っていきます」
終電を逃した時はいつもタクシーだ。
リッチだけど、歩いて帰るにも距離があるし、この方法以外ない。



