◇
「はぁ~……」
朝起きて、昨夜ホテルの人から借りた体温計で熱を測る。
現れた数字に思わず溜息が漏れた。
『38.3』
体温計に映る文字を睨みつける。
1日で治るわけないか。
異常に痛い体の節々を押さえながら、亀の様なスピードで準備をして部屋を出た。
すると。
「おはよ」
目の前に見えた光景に、一瞬時間が止まる。
ドアを開いた先にいたのは、壁に体を預けて腕を組んで立っている櫻井さんだった。
一瞬固まってしまった私だけど、急いで頭を下げて挨拶した。
そんな私の姿を見た途端、ぶっきらぼうな声がかかる。
「体調は」
「大丈夫です」
そう言うしかないじゃないか。
出ます。と言った限り。
でも勘のいい彼の事だ。
全く大丈夫でない事くらい、お見通しだろう。
私に何を言っても「出席します」と言う事も。



