キスの意味を知った日







「はぁ~……」


朝起きて、昨夜ホテルの人から借りた体温計で熱を測る。

現れた数字に思わず溜息が漏れた。


『38.3』


体温計に映る文字を睨みつける。

1日で治るわけないか。


異常に痛い体の節々を押さえながら、亀の様なスピードで準備をして部屋を出た。

すると。


「おはよ」


目の前に見えた光景に、一瞬時間が止まる。

ドアを開いた先にいたのは、壁に体を預けて腕を組んで立っている櫻井さんだった。

一瞬固まってしまった私だけど、急いで頭を下げて挨拶した。

そんな私の姿を見た途端、ぶっきらぼうな声がかかる。


「体調は」

「大丈夫です」


そう言うしかないじゃないか。

出ます。と言った限り。


でも勘のいい彼の事だ。

全く大丈夫でない事くらい、お見通しだろう。

私に何を言っても「出席します」と言う事も。