キスの意味を知った日


カードキーをかざして、自分の部屋の中に入った彼が私を部屋に入るよう促す。

これが自宅とかだったら絶対入らないけど、今は仕方ない。

ゴチャゴチャ揉めてタイムロスするよりも、言う事を聞いてさっさと自分の部屋に帰った方が効率的だ。


部屋に少し入った所で待っていると、小さな箱を手に持って戻ってきた櫻井さん。

そして、それをズイッと私に差し出して、言う。


「これ飲んで寝ろ。効くか分からないけど、飲まないよりはマシだろ」


本当は貸しを作りたくないけど、いかんせん緊急事態だ。

素直に甘えよう。


「すいません」


頭を下げて、素直にそれを受け取る。

こんな時に風邪を引くとは情けない。

体調管理なんて社会人の基本だ。

恥ずかしくて、悔しくて、目頭が熱くなる。


何やってんだ。

私。