キスの意味を知った日


説明会会場はホテルの会議室で行われていて、私達はそのホテルに泊まっている。

エレベーターに先に乗り込んだ櫻井さんが、私達の部屋がある階のボタンを押す。

その隣に立ち、櫻井さんが話し出すのを待った。

それでも――。


「あの、どうされました?」


どうせ部屋に行くなら、ここで話を終わらせて一刻も早くベットにダイブしたい。

そんな衝動にかられて、なかなか話し出さない櫻井さんに業を煮やして問いかけた。


すると、チラリと冷たい視線を私に十分送ってから、スっと突然私のおでこに手を乗せた櫻井さん。

そして。


「やっぱり」


軽い溜息まじりの声。


「熱あるだろ」


おでこに当てていた手を首筋に下して、そういう彼。

その仕草と言葉ですべて把握した。



――…バレた。