◇◇◇
長い長い説明会が終わった。
いつもなら、かじりついて聞いているのに、やっぱり風邪のせいもあってか頭に入っていかない。
椅子に座っているのが、やっと。
あぁ、そうだ。
コンビニで薬買ってこよっと。
これじゃ明日もたない。
そんな事を思いながら、フラフラした足取りで会場を出ようとすると。
「松本」
聞きなれた声で呼ばれた。
内心大きく溜息を吐きながら、死にそうになっているであろう顔を仕事用の顔に作り直す。
「なんでしょう」
腰が痛くて背筋を伸ばすと痛い。
それでも、姿勢を正して櫻井さんに向き直る。
すると。
「ちょっと来い」
そう言って、資料を小脇に抱えた櫻井さんはスタスタとエレベーターの方に向かって歩いて行った。
上司に来いと言われて、行かないわけにはいかない。
渋々、エレベーターに乗る彼の後を追った。



