キスの意味を知った日



「お、お、お、お、オヤジって!?  うちの会社の社長がですかっ!?」

「そう。同じ苗字だけど、気が付かなかった?」


そう言われて、頭をフル回転させて社長の名前を思い出す。

待って待って、そういえば社長の名前『櫻井英二』だった。


でも、櫻井って珍しい苗字じゃないし。

というか、息子が普通の平社員に混ざってるなんて誰も思わないでしょ。


「なんで、普通の社員と一緒に働いてるんですか!?」

「え?」

「だって、うちの会社って世襲制でしょ? だったら、ご子息は重役ポジションにいるのが普通じゃないですか!」


普通、自分の息子は重役ポジションに置くでしょ。

後の社長か副社長の椅子に座るなら、それが普通でしょ!

それなのに、平社員に混ざって、おまけに身を粉にして誰よりも働いて。

そんなの、誰も創業一族のご子息だなんて思う訳ないじゃない!


「それはオヤジの意向。実際に働いて現場を知らないと、いい経営者にはなれないって。俺も兄貴もそれには賛成だったから」

「お、お、お兄さんも働いてるんですかっ!?」

「もちろん。今は副社長だけど」

「……」

「だけど、昔は俺と同じように現場にいた」


最早、驚きで声が出ない私を置いて、話しを進めていく櫻井さん。

だけど、そのスケールのデカさに言葉を無くす。


す...…凄い一家じゃないか、あなた。