カラカラになった喉を水で潤して、体にかかっていたスーツを返そうとする。
すると。
「着くまで持ってて」
私の顔を見る事もなく、パソコンの画面に釘づけになったままそう言う彼。
私はあなたの秘書じゃないんですけど。
思わずそう言いそうになったけど、面倒臭いから何も言わずに押し黙る。
結局、シワにならないように電車が着くまで持っているハメになった。
会場に着く頃には、歩くのがやっと。という感じだった。
背筋を伸ばすと痛い。
気を抜くと、ガタガタと寒さで体が震えた。
倦怠感が酷くて、眩暈までしてきた。
でも、何が何でも櫻井さんに知られるのは嫌だったので必死に普通を演じた。
今日と明日が終われば、休みだ。
ありがたい事に、最終日の次の日には休みにしてもらった。
本当は名古屋で買い物でもしようと思ったけど、さっさと帰って休もう。



