キスの意味を知った日


「凄すぎる……」

「近くに湖もあるんだ。後で行ってみるか」


キョロキョロと辺りを見渡す私を満足そうに見つめる櫻井さんが、ニッコリ笑ってそう言った。

その言葉を聞いて、さっきから気になっていた事を聞いてみる。


「あの~……。その前に、櫻井さんのお父さんって何されてる方なんですか?」


こんな豪華な別荘を持っているって、どんなお父さんだよ。

小さな別荘なら少しの金持ちなら買えるけど、ここは『少しの金持ち』のランクではない。

明らか『セレブ』の別荘だ。


伺うような私の視線に、どこか気まずそうに頭を掻いている彼。

言おうか言わまいか迷っている様子に、更に怪しさが増す。


もしかして、言えないような仕事してるとか?

暴力団とか、そっち系!?


凄まじい妄想と共に、思考が嫌な方向へと進んでいく。

もし、父親が暴力団の頭とかだったら、櫻井さんもいずれは!?

え、そうしたら私も!?


よほど顔を青くしていたのか、櫻井さんが私の良からぬ妄想を断ち切るように溜息を吐いた。

そして、諦めたように口を開いた。


「俺達の会社の社長」

「へ?」

「だから、社長」

「え、誰が?」

「だから俺の親父」


その言葉に、絶句した。