キスの意味を知った日




「松本。起きろ」


肩をトンっと叩かれて、まだ重たい瞼をゆっくりと上げる。

薄らと目を開けると、変わらない電車の車内が見えた。


「あ、はい」


小さく返事をして体をモゾモゾ起こす。

それでも、一気に襲ってきた倦怠感に、一瞬顔をしかめた。


なんだろ。

以上にダルイ。


「もうすぐ着くから準備しておけ」


そう言う彼の体制は寝る前と全く変わっておらず、ずっと仕事していた事が分かる。

本当に仕事の鬼だな。


そう思いながら、亀のようにノソノソと態勢を直す。

それと同時に襲い掛かる頭痛。

関節も異常に痛い。

ヤバ……風邪ひいたかも。


最近寒かったからな。

こんな時に限って風邪とか、本当ツイてない。