キスの意味を知った日


「松本っ!!」


痛みが走ったと同時に、空気を切り裂くような櫻井さんの声が響き渡る。

ドサッと勢いよく地面に体を打ち付けて、一瞬目の前が真っ暗になった。


痛みに耐えるようにグッと奥歯を食いしばる。

そんな中、櫻井さんが私の元に駆け寄ってきた。


「大丈夫かっ!?」


倒れ込んだ私の体を支えて、櫻井さんがそう叫ぶ。

その言葉に、反射的にコクリと頷いた。


だけど、視線を上げた先に見えたのは、酷く狼狽する櫻井さんの姿。

それでも、私の視線はその背後に見える姿に釘付けになった。


ドクドクと心臓が異常な動きをする。

呼吸の仕方を忘れて、息が苦しい。

怯える私を抱き留めて、櫻井さんはギロリと背後に立つ人影を睨みつけた。


暗闇の中に浮かぶ、不気味な影。

その影が、じっと私達を見下ろしている。

そして、ゆっくりとその頬を持ち上げて口を開いた。


「僕を怒らせた君達が悪いんだよ?」