キスの意味を知った日



ギュッと強く、櫻井さんを抱きしめる。

すると、同じような強さが返ってきた。

その事に、胸の奥が締め付けられて涙が込み上げてくる。


静寂の中、だた抱きしめ合う。

お互いの熱を分け合うように。


すると、より一層抱きしめる強さが増した。

そして、耳元でポツリと櫻井さんが声を発した。


「松本」

「はい……」

「俺は――…」


櫻井さんが、そう言いかけた瞬間、突然彼の後ろに人影が見えた。

暗闇に溶け込む様にして立つ――人。


影が光を得た瞬間、ドクンと一度太鼓の様に心臓が鳴る。

え? と思った瞬間、一気に血の気が引く。


うそ。

まさか、そんな。


ドクドクと心臓が早鐘のようになる。

息の仕方を忘れて、呼吸が浅くなる。


見えるのは、見覚えのある、ねっとりとした笑顔。

そして、手にはキラリと光る、モノーー。


「櫻井さんっ!!」


影が物凄い勢いでこちらに駆けだしてきて、その光るモノが大きく振り上げられた瞬間、大きく叫んで彼を突き飛ばした。

その瞬間、今まで感じた事のない痛みが体に走った。