キスの意味を知った日




「好きです。櫻井さん」


私の言葉を聞いても、何も言わずにじっと私を見つめる櫻井さん。

それでも、瞳が少し揺れている。


「もう自分の気持ちを隠すのは、止めたんです」

「――」

「やっと、もう一度誰かを愛する事ができたんですから」


そう言って、ゆっくりと櫻井さんの手を握った。

一瞬ピクリと小さく拒絶した櫻井さんだけど、何も言わずにただ私を見つめた。

その姿に向けて、ニッコリと笑う。


大きな手。

温かい手。

この手に何度も助けられた


ゆっくりと顔を上げると、真剣な顔をした櫻井さんと目が合った。

どこか苦しそうに瞳を細めた櫻井さんが、ゆっくりと口を開く。


「お前は、怖くないのか。また傷つく事が」

「――」

「また、恋だとか愛だとか、そんなもので人生を狂わされるのが怖くないのか」


悲しそうにそう言う櫻井さんに向かって、首を横に振った。

そんな事ないと言うように、微笑みを添えて。