キスの意味を知った日


私の言葉に何も言わずに、ただ見つめ返してくる櫻井さん。

その瞳は冷たく、私を拒絶する。


「私の気持ち、本当は分かってますよね」


だけど、負けじと見つめ返して言葉を落とす。

そう。

勘のいい彼の事だ。

私の気持ちに気付いてないわけがない。

あのキスに込められた私の想いが、届いてないわけがない。


「恋愛で変わってしまった私が、櫻井さんに想いを寄せる私が怖いですか?」

「なんの事だ」

「誤魔化さないで下さい。全部分かってるんです。私をそこらへんの女と一緒にしないで下さい」


冷静な彼の答えに、私もより一層冷静な声でそう返した。

もう、戻れない。

それなら、とことんやってやろうじゃないか。

そう心の中で決めて、ぎゅっと手に力を入れた。


「確かに私は恋愛で変わりました。男の人を信用しなくなりました。幸せが怖いと感じていました」


幸せになる事は不幸と同じだと思ってた。

人を好きになる事ほど、苦しい事はないと思ってた。

転ばない様に、足元ばっかり見て歩いてきた。

その生き方が正しいと思っていた。