キスの意味を知った日

「昨日、純さんに会いました」


唐突にそう言った私に、桜を見上げていた顔をゆっくり下した櫻井さん。

真っ直ぐに櫻井さんを見つめる私の瞳を、じっと見つめ返してくる。

そして、僅かな沈黙の後、そうなんだ。と素っ気無く言葉を落とした。


どこか突き放したような言い方に、グッと拳を握る。

負けるな。と自分に言い聞かせる。


「櫻井さんの、話を聞きました」


真っ直ぐにそう言った私の言葉に、櫻井さんが僅かに目を細めた。

スッと自分の周りの温度を下げたように、一気にその表情が消える。

その姿を見て、自分の周りのバリゲードを強めたんだと察する。


「どうして、櫻井さんが恋する事を止めたのか全部聞きました」


それでも、私は言葉を続ける。

純さんの言葉が耳の奥で鳴る。


『瑠香ちゃんになら、変えられると思う』


その言葉が。


過去のジレンマに、間違いなく櫻井さんは囚われている。

私と同じように、今も『恋』に怯えている。

その力を恐れている。


だけど、本当は?

本当は、どう思っているの?

本当は、寂しいの?


何も言わずに私を見つめる彼を、じっと見つめる。

逃がさない様に、じっと見つめる。

そして。


「私が怖いですか?」