不思議に思って首を傾げると、ニタニタと笑う美咲の顔が再び近づいてくる。
日向に至っては、諦めたのか真っ赤になった顔を両手で隠している。
その様子を横目にチラリと見てから、美咲は最上級に悪そうな顔をして私に詰め寄った。
そして。
「この子、入社してからずっと櫻井さんの事好きなんだって~」
「――…え?」
その言葉を聞いた瞬間、一瞬ドクンと心臓が跳ねた。
思考が一瞬停止した。
「もぅ~美咲さん、秘密ですよ! って言ったじゃないですか~!」
「瑠香と私の間に、隠し事はなしって決まってるのよ」
頬を真っ赤に染めながら、そう言う日向を見つめる。
その顔に嘘はない。
「あ! でも出向になったのは、たまたまですよ!? ちょっと、運命かなぁ~なんて思っちゃいましたけど!」
「ほら、櫻井さんも元々関西支社でしょ? その時は日向と同じ課じゃなかったから関わる事は無かったみたいだけど、一目惚れだったんだって~」
「も~、そこまで話しちゃいます!?」
「まさか、好きな人を追ってこっちの東京の支社まで来るとはね~。情熱的だわ」
「だから、たまたまですって!」
そう言って、美咲と日向は楽しそうにキャーキャー言い合っている。
その光景をじっと見つめる。
――櫻井さん。
突然出てきた彼の名前に、何故か胸の奥がざわめく。
モクモクと黒いものが胸に漂う。



