◇
カチャ。
おぼつかない足元の私を支えながら、器用に部屋の鍵を開けている櫻井さんをボーっと見つめる。
なんだか、これが現実なのか、今見ている光景が夢なのか分からない。
あれからしばらくして、事務所から出てきた櫻井さん。
どうなったか聞いたけれど、お前は気にする事ないの一点張りで何も教えてくれなかった。
そして、そのままフラフラな私を小脇に抱えて、いつもの月極に向かい、車に揺られてここまでやってきた。
私の腕を引いてソファに座らせた後、大丈夫か。と聞いてくる櫻井さんにコクンと頷くのがやっと。
待ってろ。という言葉を聞いて、そのままキッチンへ向かった櫻井さんの背中をボーっと見つめる。
ぐるっと部屋を見渡す。
間取りは一緒だけど、置いてある物が違うだけで、まるで違う部屋のようだった。
そう。
ここは櫻井さんの家。



