「立てるか?」 ひとしきり泣いて、少し落ち着いた頃、不意に櫻井さんがそう言った。 そう言われて、足に力を入れるけど、まるで産まれたての小鹿の様だった。 足に力が入らない。 そんな私を見て、スッと体を少し屈めた櫻井さん。 そして。 「怒るなよ」 そう言った瞬間、、グイッと私を持ち上げた。 名の如く、お姫様抱っこだ。 いつもの私なら大激怒だったけど、今はそんな気力もない。 頭がボーっとする。 まるで夢の中にいるみたいに、この世界に現実味がない。