その声に遠のきそうだった意識が、はっと戻ってきた。
声のした方を見ると、スーツ姿の櫻井さんが入口に立っていた。
その姿を見た瞬間、一気に涙が溢れる。
胸が一気に締め付けられる。
うそ……。
どうして、ここに。
「さ―――っ」
助けを求めて声を出そうとしたけど、声が出なかった。
馬乗りになっていた男が、力任せに私の口を大きな手で塞いだからだ。
ドアの前に立つ櫻井さんは、そんな私と私に馬乗りになっている男を交互に見た。
そして―――。
「何してんだって聞いてんだよっ」
今まで見た事ない形相でそう叫んだ櫻井さんは、持っていたバックを放り投げて男に飛びかかった。
ドスっという低い音と共に吹き飛んだ男はゴロンと私の上から転げ落ちる。
それでも、すぐに態勢を整えてこちらを睨みつけてきた。
目を血走らせながら。



