キスの意味を知った日


「――っ――んっ――やめっ――」


抵抗すればするほど、キスが深くなっていく。

口内を蛇のように動く舌。

唇の端から、どちらの唾液か分からないが、ツっと頬を伝っていく。


その瞬間、口内に、ほんのり香る煙草の香り。

それと同時に、ふと1人の男が脳裏に浮かんだ。


櫻井さん――。


どうして彼の姿が浮かんだのかは分からない。

それでも、もう誰でもいいから助けてほしかった。


「彼氏は来てくれないよ? アイツは今日は出張だろ?」


唇を放した男が、ぺろりと唇を舐めてそう言った。

その言葉に、カッと頭に血が上る。


「あの人はっ、――彼氏なんかじゃないっ!!」

「うるさいっ!」


大声でそう言った瞬間、パンっという破裂音がフロア内に響いた。

それと同時に、右頬に焼けるような熱さが走った。