キスの意味を知った日

その言葉を聞いた瞬間、すぅっと体温が下がる。

それと同時に、フツフツと怒りが湧き起こってきた。

そんな私を気にも留めず、男性は私の髪の毛に頬擦りした後、再び私に視線を向けた。


「ずっとずっと見てたんだよ?」

「――」

「それなのに、どうして気づいてくれなかった?」


悲しそうな顔で、そういう男。

吐き気がした。


「あんたのせいで……どんだけ、迷惑したと思ってんのよっ!!」


怒りで声が震えた。

恐怖よりも、怒りが勝った。


こんな男のせいで、私がどれだけ迷惑したか。

周りに、どれだけ迷惑をかけたか。

でも、憤慨する私を見ても、男はその姿さえも愛おしい。と言わんばかりに、ふふっと笑って私の頬にゆっくりと手を伸ばしてきた。


「触らないでっ!!」


吐き捨てるようにそう言って、近寄ってきた手を払いのける。