広報部か。
それなら、知らなくて当然だ。
仕事で関わる事はほとんどないし、知り合いもいない。
「あ、すいません。帰る時ちゃんと消灯していきますので」
続く会話もなく、早く仕事に取り掛かりたかった私は、ニッコリ笑ってから再び仕事に戻ろうとする。
それでも、その人はじっと私の顔を見たまま微動だにしない。
その姿を見て、思わず首を傾げる。
「あの……?」
何か用事があるのだろうか?
伺うように椅子に座ったまま、その男性を見上げると、その人は突然ニヤリと笑った。
そして、一歩、また一歩と私に近づいてきて私の座る椅子の肘掛けに両手を置いた。
まるで、閉じ込められたようになる。
突然の事で言葉も落ちず、ただ目を瞬いて近づいてくる男性から距離を取る。
そんな私を見て、更にニヤリと笑った彼は、おもむろに眼鏡を外して私のデスクに置いた。
そして。
「やっと、2人きりになれたね」
え? と思った瞬間、背中に激痛が走った。
天地がグルンと回って、何が何だか分からなくなる。



