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コツコツと、朝日が差し込む広い会社のエントランスを歩く。
それでも、歩く度に拳が振動で痛い。
いつもの階でエレベーターを降りて、無言で席にドサッと座った。
そんな私の姿を横目で見ていた美咲が、異変に気づいたのか目を見開いた。
「ちょっと、瑠香どしたの、ソレ!? 手腫れてるし、真っ青だよ!?」
「壁殴ったら、こうなった」
真っ青に腫れた拳を見て、目を見開いて驚いている美咲。
青いというか、むしろ青黒い。
「壁って……」
あまりの猛獣ぶりに、ドン引きの美咲。
まぁ、普通そうだよね。
でもそのうち、呆れたように溜息を吐いて。
「ちゃんと冷やすんだよ」
と、助言してくれた。



