帰り道はずっと喋っていたわけではなかったけれど、なんだか心は温かいものでいっぱいだった。
そして今現在。
家に帰った私は着替えて、千隼くん家で夕飯の準備中。
……家は隣なのにまさか本当にカップ麺で生活してたなんて。
ゴミ袋の中にたまったカップ麺のカップを横目に夕飯の準備を進める。
「カレーか」
「うん。もうすぐ出来るから待ってて」
着替えてきた千隼くんがキッチンにやってくる。
隣で鍋の中を覗き込んでくる千隼くんにだんだん緊張してくる。
……あんまり見られると料理しにくいんだけどなぁ。
「すげー嫌そうな顔」
「そ、そんなことないよ?」
「やりにくいだろうが何だろうが俺は俺の好きなようにする」
そうだった。
千隼くんには何言ってもダメだった…私が叶うはずがない。
「できたよッ!お皿っ…」
高い棚にあるお皿に手を伸ばすけれどギリギリ届かない。
わっ落ちる!!
それどころか落ちてきそうになった皿に目を閉じると、それを千隼くんが受け止めた。
「あぶね…皿割ったりしたらババアがうるせーのに」
び、びっくりしたぁ!!
ってゆうか近い…ッ!!
上を見上げると、すぐ近くにある千隼くんの顔にドキリとする。
頭にフラッシュバックされる学校でのキスに赤面していまう。
「……おい、あんま見つめてるとキスすんぞ」
「へ?!あっごめん…お皿ありがと…う」
慌てて目を反らし出来上がったカレーをつぐけれど、バクバク心臓がうるさい。
私、どうしちゃったんだろう。
今朝までは全然平気だったのに…意識しすぎて本当におかしくなったかも。
「よし、完成!食べよ!」
カレーをテーブルに運ぶ。
そのあとに続いて千隼くんがテーブルについた。
なんか今さらだけど…二人っきりなんだよね?
私もそうだけど千隼くんの両親もなかなか帰ってこないし。
どうしよ…
そう考えるとなんか緊張してきた!
「いただきま」
「「「「たっだいまぁ!!」」」」
「えっ!?この声って……」
「嘘だろ。ありえねー」
「美味しそうなカレーの匂いがするわっ」
「優芽のカレーは久し振りだな!!」
「お腹空いちゃったわぁ!!」
騒がしいリビングのドアの向こう。
じっとドアを見ていると足音がだんだん私達の方へ近づいてくる。
