「何ならもう一回してやってもいいけど?」
「けけけ結構です…ッ」
後ずさる私にどんどん近づいてくる千隼くん。
にっこりと王子笑顔が逆に怖い!
千隼くん、絶対からかってるだけだ!!
「でもっ…なんでキス…ファーストキスだったのにッ!!」
「そんなこと知ってるっつーの。彼氏いない歴今までのお前が経験0なのは俺が一番知ってる」
「でもでもでもでもッ!!」
「うるさい。ちょっとくらい静かにしろよ」
「だって…!!」
「はいはい。何もしねーよ。つか帰るぞ」
千隼くんは自分の荷物を持って教室を出ていく。
あ、置いていかれる!
慌てて追いかけると千隼くんは立ち止まって待っていてくれた。
ただそれだけのことなのに、嬉しくなってしまう。
「ったく。ほんとトロいよな、お前」
「ごめんっ……」
斜め前を歩く千隼くんに私は黙ってついていく。
さっきまであんなにモヤモヤしてたのが…嘘みたい。
それに………
「優芽」
「な、何?」
「今日夕飯作れ」
千隼くんのキス、嫌じゃなかった。
確かにファーストキスだったのにあんな不意討ちみたいなキス…ちょっと心残りもあるけど。
「いいけど…なんでまた突然」
「カップ麺飽きた」
「……カップ麺で生活してたんだ。言ってくれれば作るのに」
「お前、それこそ早く言えよ」
「千隼くん料理できたよね?だからてっきり…」
「めんどくせーから自飯はしねー」
「でもカップ麺って、体に悪いよ?」
「じゃあ毎日お前が作れ」
何気ない会話だけど、今日はドキドキする。
これもキスしたせい?
