「ねー!!聞いてよ、しずく!!」




「どうしたの?」


教室に入って、梨夏の第一声がこれだった。


「あたしね、好きな人できちゃった~♪」



「えー!?うそ!?」



「ほんとっ!もぉー超かっこいいの!!」


梨夏が好きな人できるのは、決して珍しくないのだけど、



「でも、彼氏作りは止めたんじゃなかったの?」



そう、前の彼にさんざんなフラれ方をしたせいで、“恋は止めて、勉強するっ!”なんて言ってたような。



「止めたけど、再びあたしの心は動きだしたの!!やっぱり、あたしは恋しなきゃ生きてけないかも~!」


なんて、呑気なことを言っている梨夏。


一週間後に、テストあるんだけど大丈夫なのだろうか。



「しずくは?好きな人いないの?」



私は…。
高校生になって、恋に興味がないわけじゃない。むしろ、こんな私を好きと言ってくれる人がいるなら、嬉しいし…



「いないよ、別に必要ないし。」



嘘。ほんとは、怖いだけ…。


あんな思いはもう、二度としたくないだけ。