徒歩で30分、車で10分。

その先にあるのが私が通う、公立清水高等学校だ。

桜木は軽快よくリムジンを走らせている。


「大体何でお世話係でもある貴方が私を起こしてくれないわけ?」

「先ほども仰いましたが、お嬢様が気持ちよく寝ていらしたからで」

「それはもういいのよ!私が言いたいのは、仕事を全うしなさいってことよ」

「ですから、お嬢様のお休みを邪魔してはいけないという仕事です」

「どんな仕事よ!」


ダメだ…。

桜木には言葉では勝てない。

大体『お休みを邪魔してはいけない仕事』ってどんなのなのよ!

そもそもそれが職業放棄じゃないのよ!


「職業放棄ではありませんよ」

「うわ、心読まれた!?桜木エスパーなわけ?」

「フフッ。まさか」


で、結局は私が丸め込まれている。

いつもの日課だ。


前に嫌になってお父様にお世話係兼運転係の変更を頼んだんだけど、どうも無理だったみたいだ。

変更で誰がいいか下見にいった時。

たくさんゴロツキがいた。

でも、どうも私には合いそうもない人ばかりだったのだ。

だから仕方なく桜木。

仕方なく!


「えぇ、分かってますよ」


相変わらず、この男は怖いもんだ。

よし、明日からは目覚ましの数を増やすか。

私はそう決心した。


学校のチャイムがそばで鳴ったのも知らずに…。