やばい。

完全にやばい。

これは…、そう、その…。


遅刻だ!


完璧に寝坊した。

原因は私の目覚まし時計のアラームの設定ミス。

何でこの日に限ってしくじるのよ!

もう私の馬鹿!


「いってきます!」

そう叫んで私は家を飛び出す。

背後から「お嬢様、お食事は!」とメイドさんの声が聞こえるが、

私はそれを無視して玄関へ猛スピードで走っていく。

玄関から飛び出すと、運転係がニッコリと微笑んでくれる。

「おはようございますお嬢様。今日も元気で」

絶・対・皮・肉だ!

私が保証しよう。

彼の名前は桜木新。

正真正銘、この上戸家専属の運転係だ。

それでもって、ドS。

お嬢様であるこの私にもそんな態度を取れる、肝っ玉の据わった野郎だ。


「もう桜木!何で起こしてくれないのよ!」

登校用のリムジンに乗りながら、私は桜木に叫ぶ。

八つ当たりかもしれないが、そこはスルーしよう。


「だってお嬢様、気持ちよさように寝ていらしたので」


そう言って彼はフフッと笑う。

彼なりに笑いを堪えているようなのだが、

とてもそうとは思えない。

絶対にワザとだ。

ワザと。

くぅ…、悔しい!


「もういいから!さっさと車出してよ!」

右手にしたブランドの時計で時間を確認。

それによって顔が真っ青になった私は、

そう彼に叫んだ。