最強お嬢伝説！

つ…、疲れた…。

机に鞄をドンッと置いた私は、深いため息をついた。


「あんたも大変だな」

背後から、声。

それは私の幼馴染であり、私のよき理解者。

親友の、馬場嘉奈子だ。

「嘉奈子…」

「いいね、モテる女子ってもんは」

嘉奈子は皮肉を含めた笑顔で言ってくる。

「よくないわよ。毎日大変なんだから」

「ははっ、そうか」

嘉奈子は男の子のように、ウルフカットをした黒髪ショートヘアを少し揺らす。

相変わらず、言動が男の子だ。


「まぁ、あんたが本性バラしたほうがもっと大変なのはあたしも分かっているけど」

嘉奈子は、この学校で唯一、私の正体を知っている。


嘉奈子が私の招待を知ったのは、偶然だ。

特に私が話したわけでもないが。

気づいたら何故か彼女は知っていたという。

時々見せる嘉奈子の行為には謎が深まるばかりだ。


「で、そろそろ聞かせてもらおうか？」

「え？」

嘉奈子が核心を突いたかのように、ニヤッと笑って聞いてくる。

私は冷や汗が噴出したのを感じた。

「え、と…？」

「とぼけても無駄。今日の遅刻、何かあったんでしょ」

嘉奈子は勘が鋭い。

いくら嘘をついても、すぐに見抜かれる。

彼女曰く、それは長い付き合いからの経験だから何とか。

だから彼女は私のことをほとんど知っている。


でも逆に私は。

よく考えてみても、嘉奈子のことを詳しく知っているような所はひとつもない。

誕生日は知っていても、どのように、かは知らない。

恋愛について知っていても、それが本当なのか、確信は持てない。


私は一体、彼女の何を知っているのだろう。