ーピンポーン
呼び鈴が鳴った
私は急いで玄関へと向かった
重たいドアを開くと、
いつものように彼が立っていた
花束を持って
「花を持ってきました」
彼の声は、透き通っている
けれども、どこか重みがあって
安心感があるような感じがする
私は、その花束を丁寧に受け取った
今日は白いカーネーションだ
「いつもありがとう」
私は彼に向けて言った
いつもお礼はいうけれど、
「いつも」とは言わない
だから彼は少し反応したみたいで
優しく、口角を上げて笑った
帽子を深く被っていて、眼は見えない
けれどその微笑みは、
僅かにのぞく口から確認できた
私も嬉しい気持ちだった

