ミヤビの付き添いで昼間町を歩き回ったその日の夜。

疲れ果てていたハルだが、皆が寝静まった深夜に目が覚めた。


夜風にでもあたろうと下に降りると、其処にはシンリの姿が。




 「あぁハルか。どうしたこんな遅くに」


 「ちょっと目が覚めたからさ」


 「そうか。余り夜更かしはするなよ?」


ん?
何処か何時もと違うような…
彼女こんな性格だったっけ?
他人の事心配するような優しい人だったっけ?




 「何だよその顔は?」


 「嫌、別に……」


口に運んだのは酒ではなくコップ一杯の冷たい水。


今の彼女は酔っていない素の状態。


酔っている時の彼女しか知らないハルはだから違和感を覚えたのだろうと独り納得する。




 「ん?これから何処か出かけるのか?」


 「あぁ、依頼だよ依頼」


身支度をしているように見えたシンリ。

声をかけてみれば、彼女はポケットから取り出した黒い紙切れを揺らしてみせた。


内容は知らないが、昼間に受けたあの依頼である。




 「そうだハル、ついて来ると良い。私の仕事ぶりを見せてやろう」


 「あ、え……?」


扉に手を添えた所で振り返るシンリ。


有無を言わさずハルの腕を掴むと夜の町へと出て行った。