両親を殺した張本人を前に怒りがこみ上げる。

そしてそれと同時に入り混じる恐怖。


現状を忘れ拳を握るが直ぐにそれは開かれた。




 「っ……」


視界を遮る黒き蝶。

目の前を通過した途端脱力する身体。


膝から崩れ床に倒れ込み、途端に意識は遠くにとんだ。




 「…もう止めてくれないか、柴架(サイカ)……」


店内を羽ばたく5羽の蝶。
ハル以外の4人も意識を手放しその蝶は彼等の周りを舞っていた。


低く言うのは只1人女性と対抗するカナメ。


彼の肩には1羽の黒蝶。

羽ばたく事無く羽を休める。




 「止めてくれ、か。だったらお前が止めてみろカナメ。お前なら私を殺す事も可能かもしれないぞ?」


 「…それができていれば、とっくの昔に実行していたさ。だが現実問題無理だから、こうして策略を練っているんじゃないか……」


挑発するような物言いの彼女、柴架。

それに動じる様子を見せないカナメだが、額には大量の汗が浮かんでいた。




 「策略ねぇ。私を殺す為の人材を集めて、お前は本気で私を消すつもりとみた」


 「本気も何も、それが俺の存在理由。俺は貴女を消す為だけに産まれてきたのだから」


額から流れる汗を拭う事無く、カナメは柴架を睨み続けた。