「俺は別に……」
「吉崎先生が、顧問をクビになる」
「え?」
「来年度から新しいコーチが赴任してくるんだとさ。陸上でインターハイ出場の経験があって、強豪校での指導歴も長いってやつ。
たまたま職員室で教頭がお礼の電話をしてるところに出くわしたんだ。電話の相手はおそらく陸連関係の人なんじゃないか」
どっちから頼んだのかはわからないけれど、学校側がそういう指導のできる先生を採用できるよう取り計らってもらったらしい。
そんなことを福本さんは整然と話した。
「加島。それってお前のための人事だよな」
静かな目が、加島くんをとらえる。
「俺は、そんなこと頼んでません」
「お前の記録が欲しいんだよ、学校は。
お前がダメなのを全部吉崎先生のせいにされちまう」
ダメ、と簡単に福本さんは片付けた。



