「いえ、体育祭の……」
「体育祭のすぐあとに競技会があるけど、大丈夫なのか?」
返事をしようとする加島くんを遮って、福本さんはそう言葉をかぶせてきた。
「調子はあがってきています」
「記録を残せるのかって訊いてる」
「え?」
「お前のベストを上回る走りができるのか?」
それはつまりジュニアの日本新記録を出せってことだ。
「それは……」
「ずいぶんとのんびりしたもんだな」
加島くんが言葉を濁すと、福本さんはそう言った。
「あのタイムはお前の記録だ。あんなのがまぐれで出せるとは思ってないし、お前なりに努力をしてきたことも認めている」
「は……い」
「だけどな加島、陸部はお前だけのクラブじゃないよ」
福本さんはそんな当たり前のことを口にした。



